産業廃棄物ってゴミのことじゃないの?
収集運搬業の許可を取ったら全てのゴミを収集運搬できるんだよね?
産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しようと思っている方が、まず疑問やお悩みになるのはこの点ではないでしょうか。
産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しようと思っている方が、まず疑問やお悩みになるのはこの点ではないでしょうか。廃棄物とは何なのか。廃棄物の種類にはどのようなものがあるのか。産廃許可申請のプロである行政書士が解説します。
有価物と廃棄物の区別
社会に存在する「物」は、その価値によって有価物と廃棄物の大きく二つに分類されます。この分類は、物の社会的な価値や個々の利用価値に基づいています。まずは、有価物と廃棄物の概念を掘り下げ、それぞれの特徴と社会における役割について詳しく解説します。
有価物:価値ある存在
有価物は、文字通り価値があると認められるものです。これには、市場で売買される商品やサービスが含まれます。例えば、一度は愛用したがもはや自分には不要となった衣服や家電製品が、他者にとっては必要で価値あるものとなり得ます。このように、有価物はその所有者や利用者によって価値が再定義される可能性を秘めています。個人的な愛着や特定の用途において価値を見出すことも、有価物の特徴の一つです。
廃棄物:社会的な不要物
廃棄物は、利用価値を失った結果、不要となった物のことを指します。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では、廃棄物を「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物」と定義し、これらは固形状または液状のものを含みます。ただし、放射性物質やこれによって汚染された物はこの定義から除外されています。簡単に言えば、廃棄物とは、個人にも社会にも不要となった物、すなわち「ごみ」と理解されます。
廃棄物問題とその対策
1970年代の高度経済成長期には、廃棄物による環境汚染が深刻な社会問題となりました。これを受けて、廃棄物の排出抑制と処理の適正化を目的とした廃棄物処理法が施行されました。この法律は、廃棄物の適正な管理を通じて生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています。
有価物と廃棄物の区別は、物の持つ社会的および個人的価値に基づいています。廃棄物処理法の施行により、廃棄物の適正な管理が求められる現代社会において、私たちはこれらの物の価値を再評価し、資源の有効活用と環境保護のバランスを考える必要があります。物の一つ一つに対する意識を変えることが、より良い社会環境を守る第一歩となります。
産業廃棄物と一般廃棄物
廃棄物の世界は、その発生源と性質によって細かく分類されます。廃棄物処理法に基づくこの分類は、適切な廃棄物管理と処理のために不可欠です。次は、廃棄物を二つの主要なカテゴリー、産業廃棄物と一般廃棄物に分ける基準と、それぞれの特徴について詳しく掘り下げます。
産業廃棄物:事業活動から生じる廃棄物
産業廃棄物は、事業活動によって発生する廃棄物で、法律によって定められた20種類の廃棄物と、国外から輸入された廃棄物を含みます。これらは、排出された事業者が自らの責任で適切に処理しなければならないと定められています。産業廃棄物は、その発生源に応じてさらに細分化されます。例えば、「燃え殻」はすべての事業活動から発生する産業廃棄物に該当しますが、「紙くず」や「木くず」は建設業など特定の事業活動において発生した場合のみ、産業廃棄物として扱われます。
一般廃棄物:家庭や事業活動から生じるその他の廃棄物
一般廃棄物は、産業廃棄物を除くすべての廃棄物を指します。これには、家庭から排出される日常のごみや、産業廃棄物に該当しない事業活動によって発生する廃棄物が含まれます。一般廃棄物の処理は、各市区町村の責任のもとで行われます。
特別管理廃棄物:特別な注意が必要な廃棄物
特別管理廃棄物は、その毒性や感染性など、人の健康や環境に対して特に危険を及ぼす可能性がある廃棄物です。このカテゴリーには、特別管理産業廃棄物と特別管理一般廃棄物の二つがあり、いずれも特別な管理と処理が求められます。特別管理廃棄物の適切な処理は、公衆衛生と環境保護の観点から極めて重要です。
廃棄物の適切な分類と管理は、持続可能な社会を実現するために不可欠です。産業廃棄物と一般廃棄物の区別は、廃棄物がどのように処理されるべきかを理解する上での第一歩です。特に、特別管理廃棄物に対する注意深い取り扱いは、環境と公衆衛生を守るために重要な役割を果たします。廃棄物処理法に基づくこれらの分類と規制は、私たちの生活環境を保護し、より良い未来へとつながる道を示しています。
産業廃棄物の種類
産業廃棄物は全ての事業活動に伴うものと特定の事業活動に伴うものがあります。全ての事業活動において産業廃棄物に該当する廃棄物の種類は以下のとおりです。
全ての事業活動で産業廃棄物となる廃棄物
産業廃棄物の種類 | 内容 |
---|---|
燃え殻 | 事業活動で発生する石炭がら、灰かす、焼却残灰、炉清掃排出物など 例)石炭がら、灰かす、産業廃棄物の焼却灰、炉清掃排出物、コークス廃など |
汚泥 | 工場排水等の処理後に残る泥状のもの、各種製造業の製造工程で生じる泥状のものなど、有機性、無機性のすべてのもの 例)製紙スラッジ、ビルピット汚泥、下水道汚泥、糊かす、建設汚泥など |
廃油 | 鉱物性油、動植物系油脂に係る全ての廃油 例)潤滑油系廃油、切削油系廃油、洗浄油系廃油、洗車スラッジなど |
廃酸 | 廃硫酸、廃塩酸、有機廃酸類をはじめとする全ての酸性廃液 例)無機廃酸(硫酸、塩酸、硝酸等)、有機廃酸(ギ酸、酢酸、シュウ酸等)など ※中和処理した場合に生ずる沈殿物は「汚泥」 |
廃アルカリ | 廃ソーダ液をはじめとする全てのアルカリ性廃液 例)廃ソーダ液、金属せっけん廃液、写真現像廃液など ※中和処理した場合に生ずる沈殿物は「汚泥」 |
廃プラスチック類 | 合成高分子系化合物に係る固形及び液状の全ての廃プラスチック類 例)廃ポリウレタン、廃スチロール、廃ベーグライト、廃農業用フィルム、廃合成皮革、廃合成建材、合成繊維くず(ナイロン、ポリエステル、アクリル及びそれらの混紡など)、合成ゴムくず(廃タイヤ、パッキンなど)など |
ゴムくず | 天然ゴムくず 例)切断くず、ゴムくず、ゴム引布くずなど ※廃タイヤは廃プラスチック類 |
金属くず | 例)鉄くず、空き缶、スクラップ、ブリキ・トタンくず、銅線くず、研磨くず、溶接くずなど |
ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず | ガラスくず 例)廃空ビン類、板ガラスくず、破損ガラス、ガラス繊維くずなど コンクリートくず 例)製造過程等で生じるコンクリートブロックくず、インターロッキングくず 陶磁器くず 例)陶器くず、磁器くず、レンガくず、石膏ボード(紙くずの混合物)など |
鉱さい | 例)高炉・平炉・電気炉等溶解炉からの残渣、キューポラ溶鉱炉のノロ、不良鉱石など |
がれき類 | 工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物 例)コンクリート破片、アスファルト破片、レンガ・瓦などの破片 |
ばいじん | 大気汚染防止法のばい煙発生施設、ダイオキシン類対策特別措置法の排出ガス規制の対象となる特定施設又は産業廃棄物の焼却施設において発生するばいじんであって、集じん施設によって集められたもの |
特定の事業活動によって産業廃棄物となる廃棄物
産業廃棄物の種類 | 内容 |
---|---|
紙くず | 下記の事業活動によって生じる紙くず ・建設業(工作物の新築、改築又は除去によって生じたもの) ・パルプ、紙又は紙加工品の製造業 ・新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行を行うもの) ・出版業(印刷出版を行うもの) ・製本業 ・印刷物加工業 |
木くず | 下記の事業活動によって生じる木くず ・建設業(工作物の新築、改築又は除去によって生じたもの) ・木材又は木製品製造業 ・パルプ製造業 ・輸入木材の卸売業 ・物品賃貸業に係る木くず |
繊維くず | 下記の事業活動によって生じる繊維くず ・建設業(工作物の新築、改築又は除去によって生じたもの) ・繊維工業(衣類その他の繊維製品製造業を除く) |
動植物性残さ | 食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業において原料として使用した動植物に係る固形状の不要物 例)魚及び獣の骨、皮、内臓等のあら、ボイルかす、缶詰・瓶詰めの不良品、原料として保管しているもので不良となったものなど ※飲食店等から生じる動植物性残渣、売れ残り食料品は、事業系一般廃棄物 |
動物系固形不要物 | 畜場法のと畜場においてとさつし、又は解体した獣畜及び鳥処理事業の規制及び食鳥検査に関する法律の食鳥処理場において食鳥処理した食鳥に係る固形状の不要物 |
動物のふん尿 | 畜産農業に該当する事業活動に伴って生ずる動物ふん尿 例)牛、馬、豚、めん羊、山羊、にわとり、兎・毛皮獣などのふん尿 |
動物の死体 | 畜産農業に該当する事業活動に伴って生ずる動物の死体 例)牛、馬、豚、めん羊、山羊、にわとり、兎・毛皮獣などの死体 |
特別管理産業廃棄物
産業廃棄物のなかには、毒性や感染性など人の健康や環境に対して危険があるものがあります。そういった特に処理するには特別の管理が必要な廃棄物を特別管理廃棄物といい、産業廃棄物のうち、以下は特別管理産業廃棄物に該当します。
産業廃棄物の種類 | 内容 |
---|---|
廃油 | 引火点70℃未満の燃焼しやすいもの 例)廃揮発油類(ガソリン、シンナー等の廃溶剤)、廃灯油類、廃軽油類 |
廃酸 | H値が2.0以下の酸性廃液 例)廃濃硫酸、廃濃硝酸など |
廃アルカリ | pH値が12.5以上のアルカリ性廃液 例)強アルカリ廃液など |
感染性産業廃棄物 | 医療関係機関等において生じ、人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体が含まれ、若しくは付着している産業廃棄物又はこれらのおそれのある産業廃棄物 例)廃血液等の病理廃棄物、注射針、メス、ピンセット、注射器、手袋等の使用済医療機材、使用済衛生材料など |
特定有害産業廃棄物
さらにさらに特別管理産業廃棄物のうち、以下は特定有害産業廃棄物に該当します。
産業廃棄物の種類 | 内容 |
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廃PCB等 | 廃PCB、PCBを含む廃油 |
PCB汚染物 | PCBが付着、染み込んだ、封入された、塗布された以下のもの ・汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、金属くず、陶磁器くず、がれき類 |
PCB処理物 | 廃PCB等又はPCB汚染物を処分するために処理したもので、環境省令に定める基準に適合しないもの |
廃石綿等 (飛散性のあるもの) | ・石綿建材除去事業により除去された吹きつけ石綿及び石綿含有の保温材、断熱材、耐火被覆材 ・特定粉じん施設で生じた石綿で集じん施設で集められたもの ・石綿建材除去事業、特定粉じん施設又は集じん施設を設置する事業場等で用いられ、廃棄された石綿付着のおそれのある用具、器具類 |
有害産業廃棄物 | 特定施設において生じたものであって、政令に定める有害物質を基準を超えて含むもの ・政令で定める有害物質の例 水銀又はその化合物、カドミウム又はその化合物、シアン化合物、ベンゼン、ダイオキシン類・・・ |
まとめ
今回の記事のポイント
- 不要な物(自分にとって不要で他人も買わない)が廃棄物。
- 産業廃棄物は事業活動によって発生した廃棄物。
- 一般廃棄物は産業廃棄物以外の廃棄物。
- 産業廃棄物には特別な管理を必要とする特別管理産業廃棄物がある。
いかがでしたでしょうか。
一言で廃棄物といっても意外と複雑だということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
また、事業活動によっては産業廃棄物には該当しない廃棄物もあります。そのあたりが理解を難しくしている部分があるかと思います。